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どうしてそうなる? 名前も知らない女だった。 あんな女、結とは比べ物にならない。 お前は特別なんだ。 俺と別れる? そんなこと今までなかっただろ? お前には俺が必要で、俺にはお前が必要なんだ。 身体中に駆け巡る抑えきれない熱。 「……な…い」 ふつふつと沸き上がる感情。 「えっ?」 結が俺の言葉を聞き返そうとした瞬間、俺の中で何かが弾けた。 俺は結の両肩に手を置いて、そのまま中へと押し入る。 部屋の壁に到達するまで彼女を押し入り、壁に追いやる。 「俺は絶対に認めない!!」 身体中の熱をどこかに吐き出すように声をあげてそう言ったけど、気持ちが鎮まることはない。 「何でだよ!なんでそうなるんだよ!」 結を何度も揺さぶる。 結が何か言っても耳に入ってこない。 結は俺から逃げようとする。 それもまた腹が立った。 お前は逃げないと言ったんじゃないのか? 俺から逃げたりしないと言わなかったか? 絶対に逃がさない。 離さない。 それでも必死に抵抗する結。 まるで別人のような結の反応。 「俺から離れるのかよ!!!」 床に押し倒して、逃げないように必死で押さえた。 「もう一緒にはいられない!!!!」 結の叫び声のようなその声が俺の胸を刺す。 なんだよ、それ… 「なんでだよ!この前は逃げろって言っても!捨てろって言っても!どこにも行かなかっただろ!?」 結は必死で俺から逃れるように部屋の奥に這って逃げた。 「一輝…こんなことされたら…無理だから…」 荒い息、乱れた服と髪で、結が俺に言う。 俺は立ち上がる。 「なんでだよ、結…」
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