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成人式で結と連絡先を交換した。 結は地元、俺は東京。 会うことはなかったけど、俺はたまに結にメールをした。 それも結は律儀に返してくれた。 頻繁にしてたわけじゃない。 数か月に1回くらいのペース。 でも全てが俺発信。 2年くらいして、ちょうど俺の就職先が決まった時くらいにはじめて結からの発信があった。 【東京に転勤の内示が出ちゃったよ。ちょっと力かしてくれない?】 結が東京に来る。 俺は自分の女関係を精算した。 結が東京に来て暫くして、俺は結と付き合いだした。 もちろん、告白は俺から。 ちゃんと言わなきゃ、気づかないくらい鈍感なやつだから、そこは抑えた。 手を繋ぐのも、抱き締めるのも、キスをするのも、身体を合わせるのも…全てが新鮮で緊張した。 結と接すると、俺は中学の時の自分に戻る感覚だった。 彼女の一喜一憂が俺の心を支配する。 思ってた以上に、俺は結を想っていたみたいだ。 今までにない感覚に焦って、小さなプライドが俺を暴走させる。 他の女の子と遊びに行ったりしてみた。 君に夢中だと、結本人に知られたくなかった。 こんなにも長く時間を共にした女はいない。 「気を付けろよ」 頬にキスをして早朝に仕事に出る結。 この数年、何百回と交わした朝。 30歳目前の彼女はキラキラしていた。 鏡でシワなんて気にすることない。 いい顔してるよ。 俺が証明する。 俺なんかよりずっとずっと充実した毎日を送ってるだろ? 仕事に出た結の部屋は静まりかえる。 俺はもう一眠りしてから、パチンコにでも行こうかと企む。 週明けからまた仕事。 まだ結には話せてないけど、辞めようと思ってる。 正直、給料がいいだけで楽しい仕事でもなんでもない。 一生あそこで仕事をする気になれない。 そう言えば、最近仕事を辞めた大学の先輩が居たな… 家族もいる先輩が今どうしてるのか気になった。 SNSを見ても生活は順調そう。 先輩も単調な毎日にうんざりしてた。 俺は先輩に連絡を取ってみることにした。
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