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「一輝、本当に何もないから」 二人一緒にこんな時間まで何もなしにドライブなんて… 「信じられるか!!」 乱暴に結の腕を振り払った。 俺は怒りに任せて男の胸ぐらを掴み、車の車体に男の身体をぶつける。 この男だけは締め上げとくしかない。 俺のものに手を出した。 許せるわけがない。 「一輝止めてよ」 「お前がフラフラフラフラしてるからだろうが!!!」 男を庇おうとする結さえも憎くなり、殴ろうとした瞬間、腹部に衝撃を感じて俺は地面に倒れこんだ。 男が俺を蹴り飛ばしたんだ。 「彼女に隙なんてなかったよ。いつも毅然としていた。君を思っていたんだと思う」 男は静かな声で、でもハッキリとそう言った。 「下心だして近づいてた俺が言うんだから間違いない」 そう言って結にやさしく微笑んだ。 俺の苛立ちはマックスだった。 殺してやりたいくらい憎い。 「結婚指輪着けたおっさんが何ほざいてんだよ!!!」 お前なんかに渡してなるものかと、男の胸ぐらを掴もうとするも、さっきのボディブローが効いているのか見透かされて両手を抑えられた。 「そうだよ。普通だったら俺なんて入る隙なんてないんだよ。でも君がそうしたんだろ!?」 男は真っ直ぐ睨み付けて声を上げて俺に言った。 俺も男を睨み付ける。 どんなに力を出しても、男の掴む手から逃れられない。 こんなおっさんに負けてたまるかと満身の力をこめる。 「君が彼女から受け取ったお金は、彼女が必死で働いて貯めたお金だ」 そんことおっさんに言われなくても知ってる。 「悔しいことや辛いこと、理不尽なことにも耐えて」 何でそんなことコイツから聞かなきゃならないんだ。 「君が彼女にした暴力は、身体だけじゃない心にも大きな傷を負わせたんだよ」 そんなこと、知ってるよ。 「額の傷、手首のアザ、周りからどんな目で見られてると思う?」 俺は悪くない。 結が俺を裏切るからだ。
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