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「松嶋、このスリルがいい。でも、お奨めはしない。自己責任だから」 先輩はデイトレーダーで生計をたてていた。 奥さんは看護師。 それなりにいい生活を送っている。 社会に出て10年はがむしゃらに働いて、その元手でやってるらしい。 俺もそのスリルを味わいたくなった。 仕事を辞めたところで別に次があるわけじゃない。 じゃ、それをやってみようと思った。 貯金の半分を自己資金にしてとりあえずやってみる。 結にも言わなきゃならない。 どんな反応をするだろうか。 今まで転職する度に、ショックを受けたような顔をしてはその上から必死で笑顔を見せて応援してくれた。 あいつはそう言うヤツ。 結局は俺を応援してくれる。 自立した女。 結婚したいとか責任取れとか、煩いこと言わないヤツ。 悪いけど、結婚はまだ先だ。 「いい加減地に足つけてよ。不安で着いていけない」 眉間にシワを寄せて言い放った結。 せっかく楽しい久々のランチが台無しだ。 イライラする。 俺の人生は俺のものだ。 お前には関係ない。 そう伝えたら傷ついた顔をする。 結、お前は俺に何を求めてるんだよ。 俺をがっかりさせないでくれ。 お前は自立した女だろ? 夢叶えて、生き生きしてるだろ? 俺はまだなんだ。 だから、俺に多くのことを望まないでくれ。 たのむよ…。 これ以上話しても実のある話にはならない。 それなら帰ろうと思った。 金を払って帰ろうとしたら、結が伝票を押さえた。 「私が払う」 無職に奢られたくない? 相当怒ってる。 でも、まぁ、それくらい強くて助かる。 泣かれたら困るから。 「ごちそうさん」 とりあえず話した。 俺は後は結の出方を待てばいいと思った。 どうせすぐに連絡が来ると思っていた。 だけど、意外と来なかった。 そう出るならそれでいいさ。 そう思ってた。
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