7/9

2950人が本棚に入れています
本棚に追加
/75ページ
ーー…… ドカッと殴られて少しよろけた。 眉間にシワを寄せて俺の頬を殴ったのは親父だった。 週末、実家に帰って洗いざらい話した。 親父に殴られたのは、久々だった。 口の中で血の味がする。 側では母親が、そして、少し離れて2階へ続く階段に腰を掛けてこちらを見る弟がいるリビング。 そこで俺は親父と対面していた。 「母さん、あれを持って来てくれ」 親父がそう言うと、母親は一瞬リビングを出て、すぐ戻ってきた。 母親は、父親に分厚い封筒を渡す。 「すぐに高城さんに返しなさい」 そう言ってリビングのテーブルに乱暴にその封筒を置いた。 封筒は銀行のもので、中身は400万だと想像できた。 「やるんじゃない。貸すんだ。必ず真面目に働いて返せ」 親父はそう言って、リビングのソファに座り、俺に背を向けた。 情けないが、返せる目処なんてない。 俺は暫くその封筒を眺めた。 「…借りれません」 俺はそうポツリと言った。 金を借りに来た訳じゃない。 全部話して、直視して、けじめをつけにきた。 結には必ず自分でお金は返す。
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2950人が本棚に入れています
本棚に追加