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ーー……
ドカッと殴られて少しよろけた。
眉間にシワを寄せて俺の頬を殴ったのは親父だった。
週末、実家に帰って洗いざらい話した。
親父に殴られたのは、久々だった。
口の中で血の味がする。
側では母親が、そして、少し離れて2階へ続く階段に腰を掛けてこちらを見る弟がいるリビング。
そこで俺は親父と対面していた。
「母さん、あれを持って来てくれ」
親父がそう言うと、母親は一瞬リビングを出て、すぐ戻ってきた。
母親は、父親に分厚い封筒を渡す。
「すぐに高城さんに返しなさい」
そう言ってリビングのテーブルに乱暴にその封筒を置いた。
封筒は銀行のもので、中身は400万だと想像できた。
「やるんじゃない。貸すんだ。必ず真面目に働いて返せ」
親父はそう言って、リビングのソファに座り、俺に背を向けた。
情けないが、返せる目処なんてない。
俺は暫くその封筒を眺めた。
「…借りれません」
俺はそうポツリと言った。
金を借りに来た訳じゃない。
全部話して、直視して、けじめをつけにきた。
結には必ず自分でお金は返す。
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