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新幹線が入って来るのをホームで立って待った。
スマホを右手に持って、LINEの送信ボタンをタップ出来ないでいた。
《近々時間空けてくれる?》
ただ、その内容だけなのに、これを送れば別れ話をしないといけない自分に怯んでしまう。
新幹線がホームに入ってきて、指定席の座席に座る。
座席に座って、軽く息を吐いてから、送信をタップした。
この期に及んで、悪足掻きなんてしてる場合じゃない。
東京に戻って、結と話さないといけない。
スマホを持ったまま画面を眺めていると、視線を感じた。
通路を挟んで隣の席をチラッと見るはずが、二度見する。
まさかの結がそこに座っていた。
お互いに驚きの表情。
「実家に帰ってたのか?」
「一輝も?」
予想外の偶然に驚いたものの、これは神様にも早く決着をつけろと言われているように思った。
フリーズしていた結が、徐に鞄からスマホを出して画面を見ていた。
今!?と思うも、止められるはずもなく、俺のスマホ画面に既読がついた。
「…今から一時間は確実に空いているけど」
逃げも隠れも出来ない状態。
「確かにそうだけど」
あまりの早い展開に笑うしかなかった。
「うそうそ、着いてからにする?」
状況が、運命が、今だと言っているように感じた。
周りを見ると、満席ではなかった。
「まぁ、いいか」
こんな場面は想像していなかったけれど、俺はここで話そうと決めた。
ほどよい距離感。
静かすぎない新幹線の独特な雰囲気。
今話すことが、最良だと思った。
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