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東京駅に着く前、結は泣いた顔を直してくると、新幹線の化粧室へ行った。
俺は今さっきまで座っていた、彼女の席を眺めてから、ズボンのポケットからキーケースを出した。
何本かある鍵の中から、1本の鍵を取り外す。
結の自宅の鍵だ。
俺はその鍵を手の平の上に持ち、その手の親指でなぞった。
初めて鍵を貰った日のことを思い出す。
胸が痛い。
ギュッと鍵を握る。
自分で導いてしまった結果だとわかっている。
だけど、後悔を感じずにはいられない。
通路の向こうから、結が戻ってくる姿を見つけた。
俺は急いで、ポケットから封筒を出して鍵を入れ、もう一度ポケットに戻した。
もうすぐ東京駅に着く。
東京駅から結の自宅まで、送ることにした。
在来線を乗るだけ。
それでも、最後だから、送り届けてやりたかった。
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