晴れ

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「パソコンは今年のものですね?」 「そうですね」 いい値段がつくのだろうか… クローゼットを開けて、その中身も全て審査していく。 「この鞄や引出しに入っている時計やサングラスもですか」 「あぁ…はい」 すっかり忘れていた… 学生の時に、ホストをしていた時にお客さんから貰ったものだ。 乱雑にしまわれていたが、男は今までの倍以上時間をかけて丁寧に審査していた。 人から貰った物だから、棄てるのにも抵抗があり、ずっと段ボールに入れられてクローゼットに眠っていた。 「新品のものもありますし、使用数もお見受けするにあまりないようなので、いい値段つきますよ」 意外な産物だ。 さっきまでとは明らかに違う電卓の動きだ。 男は時間をかけて丁寧にブランド品を物色してから、次は本棚に移動した。 「本も沢山ありますね」 「本も二束三文でしょ?」 「ほとんどはそうですが、中にたまにすごいのがあったりするんですよ」 そうは言いながらも背表紙をまぁまぁな早さで確認していく。 一番天井に近い棚からはじまり、どんどん下の段へ進んでいく。 「これ…医学書ですか?」 男は一番したの段までいって、俺に問い掛けた。 国家試験の参考書の本とは別に、昔親父から貰った医学書も一緒に本棚に並んでいた。 面白いと思って自分で手にいれたものもある。 「こちらもいい値段つきますよ」 男はそう言いながら、下の段の医学書や薬学書を出して見ていく。 昔よく読んだものばかりだ。 それが算出されていく。 「待ってくれ」 自然と制止の言葉が出た。 「えっ?」 彼は本を持ったままこちらを向く。 「それは…やっぱり置いときます」 俺がそう言うと、彼は本を元の位置に戻してくれた。
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