晴れ

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「脈が早いですね!どこが苦しいですか?」 勇輝の問い掛けに、彼女は苦痛な表情で小さく首を横に振るう。 答えられないくらい辛いようだ。 少し近づくと、彼女の額に汗が滲んでるのがわかった。 「救急車呼びましょうか?」 勇輝がそう尋ねると、首を横に振るも苦しそうに下を向いて小さく声を上げた。 苦しそうな声を上げて、地面に手をつく。 俺は彼女の様子や状態を眺めた。 「やっぱり救急車呼びましょう!」 勇輝はポケットからスマホを出す。 発信ボタンをタップする直前に、俺は勇輝を止めた。 「何!?」 俺の行動に勇輝が声をあげる。 「妊婦だ」 「えっ?」 彼女の背負うリュックにはマタニティマークのキーホルダーがついていた。 「臨月ですか?」 俺が彼女に寄り添い問い掛けると、彼女はうずくまったまま頷いた。 「陣痛ですか?」 その問い掛けにも頷いた。 「何分間隔かはかってる?」 彼女はその問い掛けにも必死で答えようと、片手を少し上げた。 「5分間隔?」 俺が確認すると頷く。 「初産?」 その問い掛けにも頷いた。 「初産なら5分間隔でもすぐじゃないだろうけど…産院に急いだ方がいい」 「車で連れてってやろう!」 「えっ?」 勇輝は彼女の陣痛と陣痛の合間に車で産院まで送ろうと言う。 見ず知らずの妊婦を車に? 俺は勇輝を止めようとしたが、勇輝は彼女の呼吸が落ち着いたのを見て自分の車に乗るようにとすすめる。 遠慮する妊婦の彼女を、勇輝は強引に車寄せに停めている車に乗せた。
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