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勇輝も続いて運転席に乗り込み、俺の方を真剣に見た。
「なんだよ…」
「後悔してる」
「はぁ?」
いつも真面目な弟が、更に真面目な顔をして俺に迫る。
「兄ちゃんの夢、俺が横取りした」
勇輝のその言葉は、少し震えていた。
泣きそうになりながら、勇輝は俺を見つめている。
こいつは、もしかしたら、何年もそんな風に思ってきたんだろうか。
「お前、小児科医したくねぇの?」
「それは違う!父さんみたいになりたい!」
声を上げて否定した。
「じゃ、問題ないだろ。俺、お前に奪われたなんて思ってねぇし」
「兄ちゃんは昔から意地悪だ」
「はぁ!?」
「だけど…ここぞって時は譲ってくれる」
それをずっと、勇輝は負い目に思ってたわけか?
「俺は兄ちゃんが譲ってくれるってわかってて言ったんだ」
真面目な勇輝らしい、苦しみだと思った。
俺に少しでも勇輝みたいな気持ちがあれば、人生違ってたかもしれないと思った。
少なくとも、結をあそこまで傷付けたりしなかったはずだ。
懺悔する勇輝の頭を叩く。
「イタッ」
「バカじゃねぇの?譲ったりしてねぇし」
「俺が言ったから医者の道諦めただろ?」
「諦めてねぇよ」
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