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人生でこんなに真面目に真剣に勉強したことがないくらい、俺は毎日12時間デスクに向かっていた。 若干の記憶力の衰えを感じる。 10代のあの記憶力はどこへ行ったんだと思うこともあったが、弱音なんて吐いてる暇はなかった。 とにかく、寝る食う時間以外の全てを医大入試の為に費やした。 数ヶ月なんてあっという間に過ぎて、季節は真冬になっていった。 「兄ちゃん、これT医科大の過去問」 勇輝がノックして部屋に入って、過去問のプリントを渡してくれた。 「T大の医学部一本にしぼるんじゃなかったの?」 「そんなこと言ってられっか」 勇輝から受け取ったプリントを広げて問題を確認する。 勉強して焦りを感じるのは初めてだ。 「やっぱ、O医科大の過去問も買ってくるわ」 俺は立ち上がって、クローゼットからダウンを出して羽織る。 「外寒いから、買ってきてあげるよ」 ありがたい申し出。 「ちょっと参考書も見たいし、自分でいく。サンキューな」 俺は勇輝にそう言って部屋を出た。
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