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「逃した魚はでかかっただろ?」 冗談でそう言って彼女を見た。 「なってから言ってよ」 結がまた笑ってそう返してくれた。 結を笑顔にさせることなんて、もう二度と出来ないのかもと思っていた。 普通に話せて接してくれている彼女が、堪らなく恋しかった。 「で、あのおっさん元気なの?」 自分にブレーキをかける意味でも、彼女に現状を聞いてみた。 「おっさん?…あっ、おっさんじゃないから、鈴木チーフでしょ?」 「知らねーよ。おっさんだろ」 「なんで鈴木チーフの話?」 結が照れているのがわかった。 「付き合ったりしてねぇの?」 確認の為に聞いてみると、少し頬を赤らめたのがわかった。 「なんでわかるの?」 「あのおっさん、誰が見てもおまえのこと好きだろ」 「えっ?」 「はじめて会った時から気にくわなかった」 ぶっちゃけて話す。 「俺のこと蹴りやがった時には疑いが確信に変わったしな」 「あの時は本当に何もないよ!?」 そんなことわかってる。 「ちげーよ。おまえじゃなくて、おっさんが」 俺の言葉に結は驚き、そして少し不安を抱えているように感じた。 「上手くいってねぇの?」 「えっ?」 聞きたくもない話だけど、ここまで聞いたら全部聞いてやろうと心に決める。 「話してみろよ」 「えっ!?」 結は躊躇する。 「いいから、話せよ!」 俺の勢いに押されてか、結は現状を話し出した。 それは結らしい悩みだった。 結の行動や気持ちが手に取るようにわかる内容で、客観的になるとこんなにも恋愛話は簡単なものなのかと思った。
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