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「あれ、なんでまーくんがここにいるの?」
明かりのない、真っ暗な古ぼけた空き家の前で、真梨子はきょとんとする。
三村は当然のように言った。
「真梨子と離れたくないからだよ」
えっ?と三村は自身の発言に驚く。
彼はこの空き家こそ、真梨子が幼少の頃を過ごした場所であり、幼なじみの彼との出会いもここだと説明するつもりだった。
だが、どうしてか言葉が出てこなかった。
「えっ、ホント?」真梨子がそばに寄ってくる。
「ホントだよ。照れ臭いけど、真梨子の事離したくないんだ」
「嬉しい!でも、」と突然彼女はストップした。
「どうしたの、真梨子?」
「どうして、いつもの時に言ってくれなかったの。あたしね、さびしかった。まーくん、仕事の帰りが遅くてさ、最初はご飯作って待ってたのに……電話で食べて帰ってくるって事がほとんど毎日になって。好きなのに、まーくんの事嫌いになっちゃったの。だから、嫌な事もしたくないのに、やっちゃったんだ。仕事が大変なこと、わかってるから正直に辛いこと、話して欲しかった」
三村は思ったことをそのまま言った。
「そうだったんだ……俺、仕事でいっぱいいっぱいだったんだ。繁忙期入って一層忙しくなって。本音なんて、真梨子に言ってもどうしようもないだろうなって思ってた。だけど、心の底では言いたかった、辛くてしんどくて仕事やめようとも考えてるってことを」
真梨子は笑った。爆笑しながら、泣いていた。
「はは!あたし達……似た者同士だね。ちっちゃい頃から、ずっとそう思ってたけどホントそっくり。不器用で甘え下手」
「そうだな」気づいたら三村も目頭が熱くなっていた。
「仕事も人間付き合いも下手くそ。でも、大切な人の為に……必死で探したりできる心の優しい人なんじゃないかなって思う。ねえ、これからもよろしくお願いしてもいい?」
三村は返事のかわりに、真梨子を抱き寄せキスをしようとした。
「待って!粘膜接触しちゃうと、あたしの病気うつるよ」
それでも、キスをする。
三村は言った。
「気にするな。もう伝染(うつ)ってる」
彼は二度と離れないように、ギュッと彼女を抱きしめた。
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