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◇◇◇
白塗りの大学病因内、『特殊感染外来科』診察室。
アルコール消毒液の匂いが少々黄ばんだカーテンにまで染み込んでいる。
鉄製の丸椅子には白衣の医師、三村と真梨子が座っていた。真梨子は三村の腕に絡みつく。
まるで初彼氏ができて、恥ずかしい位周囲にアピールする少女のようだった。
医師は淡々と診断結果を伝える。
「これは典型的な言語的非心因性発話衝動症候群ですね。世間ではわかりやすく『本音症候群』と呼ばれている感染症ですね」
「やっぱりそうでしたか。けっこうテレビでも話題になっていて、私も妻の様子からこちらの感染症にかかったと思いまして」
言語的非心因性発話衝動症候群。
別名、『本音症候群』。
今だ感染経路が不明なこの病にかかってしまうと、思った事を口に出してしまう奇怪な病。幸い重篤な障害や命に別状はない。
ただし、今まで話せていなかった本音をしゃべってしまう事で、社会生活で大きな障害となってしまうケースが多い。
なにより、治った後で本人にとって、一生消し去りたい黒歴史となる。
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