雫三滴:水神あらわる

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ブクブク… ブクブク… 空間という名の空間は、空気など入る余地もない。全てが、水・水・水。とにかく、水。 床の数ヵ所から出ている水泡は、楕円形(だえんけい)を描きながらブクブクと高すぎる天井まで上がっていた。 そんな静かな"この世界"―… は、水神界だ。 しかし。 一滴の雫の濁りさえも赦(ゆる)されないような、清き澄みきった美しすぎるこの『世界』には似つかわしくない、耳に触る声が響き渡っていた。 「私の親は、身代金を簡単には払ってくれないの。困るわ!」 少女の名は、桐島 美雨。 しゃがんで両手を床に付き、やや四つん這いになった状態で、ひたすら周囲を見渡していた。 不思議なことに、少女の回りには何か『バリヤー』のようなものが張られてあり、そこだけは水がなくて、空気によって空間が完成されていた。例えるならシャボン玉のよう。 それは、まさしく『人間が呼吸が出来る状態』である。
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