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「それとも何か他にお目当てがあるのかしら!?こ、ここは一体どこな―…」
「うっせ~人質だなぁオイ」
「ひっ、人質!?」
レオに口を塞がれたのは、これで二度目。
レオは片足を床に膝間付き、その右手を美雨に当てたまま、左手で自分の口に指を当てた。
そんな彼の手が大きいのか、美雨の顔が小さいのか、美雨の顔面の目から下の殆どが覆(おお)われてしまっている。
美雨は、その仕草(しぐさ)が「静かにしろ」という命令なのだと分かったが、そんな余裕は無い。
そして何かで頭をゴンと打ち、すぐ背後に壁があることを悟(さと)った。
美雨の回りを囲んでいるこの『バリヤー』は、ただの水がある空間と水のない空間との境目な訳だが、レオはそのバリヤーを無視してズイッと美雨に近寄って来た。
「私が、人質―…?」
「違う、違う。人質では ないから心配はいらない。私は人間にそのような事をするつもりはない。それと…マサ、説明は私がするから、お前は黙っておけ」
「ちぇっ」とマサが舌打ちした。
パニック状態の美雨は、身体を震わせながらも周囲を見渡そうと、やっと顔を上げてみ た。
しかし、頭の中がパニックになっている今の彼女にとっては、「目の前で、ただ穏やかに笑っている二十代くらい(多分)のヤケに髪が長くて色も変な男の人(多分)っぽい顔」という風にしか、理解する事が出来ない。
美雨にはレオがニコニコしているのが返って怖いらしい。
「驚かせてしまってすまない。只、私には時間がないんだ。だから私の質問にだけ答えてくれ。そうすれば直ぐに帰れる。
君はあの部屋の住人で、間違い無いんだな?」
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