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「お嬢様!お嬢様っ!!」
「………」
「お嬢様!しっかり…」
「………」
「杏子さん、ちょっと落ち着きなさい。美雨、美雨!?」
美雨の頬に手でペタペタと叩く、母・美都。
そして隣で あたふたと、どうすれば良いのか分からない顔をしているのは、家政婦こと杏子(あんこ)。
茶色のワンピースの上に白いエプロンを着けている杏子は膝間付いて、美雨を抱き起こそうとしている。
「お嬢様!」
「ん…」
杏子のどや声は、美雨の意識を取り戻すのには、十分だった。美雨の閉じていたまぶたが、ゆっくりと開いた。
「美雨!」
美都が言ったのと杏子がホッと胸を撫で下ろしたのはほぼ同時だった。
「お嬢様!大丈夫ですか!?どうなさいました?部屋に参りました所、倒れていたものですから―…。あぁ、良かった!」
杏子はそう言って、美雨の肩を抱く。その瞳には涙が浮かんでいる。
「あ…れ?私…でも、ここは?私、さっきの人達は…」
美雨の目は焦点の合っておらずボーッとしながら、母親を捉えた。
「熱いお湯に浸かりすぎて、のぼせたのよ。もう冬じゃないんだから、もう少し温度下げときなさいね」
美都は杏とは対照的に落ち着 いていた。
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