雫七滴:炎神

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そんなドラマチックな雰囲気が漂うこの"部屋"は、廃墟の建物のように、薄暗くて湿々していた。床は、黒と金の四角が交互する一抹柄で、天井は黒。壁も黒かった。 そんなこの部屋に、ドスの効いた声が響く。 「ぐぁーっはっはっはっ。今日の酒はうンめぇなぁ」 たん混じりの声。 その声の主は酒瓶を左手に、またゴクゴクと口にしてはビール瓶を畳に強く置いた。ビール瓶が離れた口の回りが真っ白になっていた。 回りを囲む女達がそれを白いハンカチで拭う。そしてその内の一人の男が、言った。 「いつもと変わらない日本酒ですが…」 控え目に言うのは若そうな容姿の、やせ形の男。 「何でだろうなぁ」 「綺麗な女性と飲む酒は、一味も二味も違うって。ことかしら?」 と年配の女が言う。
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