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悪戯の代わりに口でいじくることにして、部屋の入り口付近でもじもじしている彼女を振り返る。
「ここを詳細に語るシチュエーションが来るとは思えませんが、具体的に思い描ければよりリアリティーが出るでしょう」
つまり、このベッドで誰と何をするのかを、具体的に。
そんなことを真面目くさった顔で言うと、じっと僕を見つめる彼女の顔がみるみる赤くなっていく。
これではセクハラじじいを取り締まれないなと思わなくもないが、それはそれとして。
彼女の想像が十分に膨らんだところで、僕は話をひっくり返した。
「企画の仕事がそうでしょう?」
彼女の頬がさらに真っ赤になる。
「はい。年齢や趣味、家族構成まで具体的にユーザー像を想定して、発想を膨らませていきます」
ベッドを前にして、堅苦しい言葉で必死に武装する彼女はなかなか可愛かった。
僕はひねくれ者なので、こういう時にすんなりと女をアピールしてくるタイプが苦手だ。
ベッドに誘うのは簡単かもしれないが、その前に胸焼けしてしまう。
でも正常な男は彼女よりもそんな女が好きなのだろう。
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