彼女の涙ー1

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悪戯の代わりに口でいじくることにして、部屋の入り口付近でもじもじしている彼女を振り返る。 「ここを詳細に語るシチュエーションが来るとは思えませんが、具体的に思い描ければよりリアリティーが出るでしょう」 つまり、このベッドで誰と何をするのかを、具体的に。 そんなことを真面目くさった顔で言うと、じっと僕を見つめる彼女の顔がみるみる赤くなっていく。 これではセクハラじじいを取り締まれないなと思わなくもないが、それはそれとして。 彼女の想像が十分に膨らんだところで、僕は話をひっくり返した。 「企画の仕事がそうでしょう?」 彼女の頬がさらに真っ赤になる。 「はい。年齢や趣味、家族構成まで具体的にユーザー像を想定して、発想を膨らませていきます」 ベッドを前にして、堅苦しい言葉で必死に武装する彼女はなかなか可愛かった。 僕はひねくれ者なので、こういう時にすんなりと女をアピールしてくるタイプが苦手だ。 ベッドに誘うのは簡単かもしれないが、その前に胸焼けしてしまう。 でも正常な男は彼女よりもそんな女が好きなのだろう。
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