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「もしかして今回も体験が必要だという意味なら……」
“僕は構いませんよ”
続きの台詞はあったのだけど、彼女は聞いちゃいなかった。
「そんなこと言ってませんっ」
彼女は真っ赤になり、全身の毛を逆立てた猫のようにかみついた。
「失礼。以前は違うことを仰っていたので」
“以前”は説明するまでもない。
今後もう男とは無縁に終わると嘆いて見知らぬ男相手にストリップをやらかしたあの時のことを蒸し返し、あちこちからつつきまくる。
彼女がぐっと詰まって僕を睨みつけたところでインターホンが鳴った。
「これは残念。いいところだったのに」
最初は、料理が届くまでの時間、彼女の緊張と昼間の出来事の落ち込みを和らげるために少しからかってやる目的だった。
なのに、彼女を残し玄関に向かいながら、自然と僕は声を立てて笑っていた。
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