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『気の毒なほど謝っておられました。私が溜め込んでいたんです、副本部長からは先週預かっていたと』
人事秘書は気の毒そうな表情を浮かべた。
『文書はいつも彼女が?』
『はい。現在の副本部長になってからは特に……』
恐らく彼女は私のせいだと言えと、叱責を受けたのだろう。
先日の雑用の話といい、閉鎖的な小さな部門の中で起きていることが垣間みえている。
彼女の社に着き、五階に上がる。
現在、午後七時。
彼女からまだメールはない。
企画本部のドアの磨りガラスにはまだ人影が見えていた。
その中には彼女もいるはずだ。
約束を反故にしてしまえるほど世間擦れしていないし、昼間の出来事を無かったことにして振る舞えるほど器用でもない。
悶々と悩んでいるであろう彼女の捕獲タイミングを待つ間、雑用の片付けのついでに副本部長の前歴を調べるため、僕は人事部に戻った。
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