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寝顔はまだ少し悲しげで、白く乾いた涙の痕は幾筋も重なっている。
昼間も夜も傷ついて泣いたことを思うと、ひとときの安息を得た小さな寝息がいじらしく感じられた。
僕のやり方は荒療治すぎただろうか?
彼女の泣き顔を思い出すと、胸の奥にまたあの痛みが走る。
じわじわと僕を侵食するそれが僕は気に入らなかった。
片隅で泣いているこんな社員は星の数ほどいる。
会社は仲良し家族では立ち行かない。
僕は能力に欠ける社員にはシビアだったし、小さな犠牲にとらわれていては大きな目的を遂行できないと、これまでその方程式通りにやってきた。
なのに気づくと彼女には手を差しのべている。
組織を優先する僕が末端の社員に思いを馳せたのは初めてだった。
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