皆川編第7話 ｢彼女の涙ｰ2｣

彼女の涙-2

それは、世渡りの器用さも秀でたところも持たない彼女に対する同情だろうか。

それとも、不条理がまかり通る組織に対する人事関係者としての苛立ちだろうか。

僕の視線に気づくと、彼女は慌てたようにまたうつ向いた。

僕への苦手意識と怯えも隠せない彼女を見て、自身の分析は脇に押しやり、本来の目的に立ち返った。

「女性に鰻は微妙かと思ったんですが、今日は寿司なんかよりこってりがいいかと」

彼女の皿にはもう漬け物程度しか残っていない。

もうじき食事を終える様子なのを見て本題の前振りをする。

元々はカップルごっこの打ち合わせという名目だったが、今日の昼で目的は変わった。

「今日、昼食を摂っていなかったのでは？」

「……はい」

彼女はうつ向いたまま小さな声で返事して、ほとんど何も残っていない椀をつつくふりをした。