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暫く忙しい日が続き、久しぶりに行くとおでん屋はなくなっており、代わりにラーメン屋が出来ていた。
食べれないとなると食べたくなる。
辺りを探し、見つけた場所は違う繁華街の路地。
「いらっしゃい」
「いつものを。親父さん、いつ場所変えたんだ?」
「屋台ってのは色々とあるんですよ。旦那に会ってなかったから言えなくて悪いなと思ってたんですけどね、まぁここでしばらくは出来るんで良かったら寄ってください」
「分かった。何かあれば言ってくれ」
力になると言いたったが、狐の力を使うとも言えず、更には職業を勝手に見た目から判断していたようなのでその言葉は飲み込んだ。
ただ、黒髪に黒のスーツを着ているだけなのだが、背の高さと体格からそう思われたのかもしれない。
元々会話をする方では無いので、黙ってつまんで酒を飲んで支払い帰る。
数年すると、大分年をとって出来ないと言い出したので、困る!とつい言ってしまったが、気を探ると体はあまり良くないようだった。
なんとかしたいと初めて思ったが、それは理に反する……
「親父、身体大事にな……」
それが最後の会話となった。
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