1人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「お前、昨日これ落としていっただろ」
カバンにつけてたピンクの丸いキャラクター。かわいかったから衝動的に買ったやつ。なんのキャラクターすらよく分かってない。
「わざわざ持ってきてくれたの?」
「大切なものかもしれないと思って」
そっか。やっぱりとおるくんは昔のまま。優しいままなんだ。
「お前さ。気付いていただろ。オレの不思議な力に」
「えっ?」
「もし気が付いてたなら、大切な事忘れてるぞ」
大切な事?
「キスするとモテる力は移る。そして移した方はモテなくなる」
うそっ?ってことは志保に移ってるってこと!?
「でも、私…、幼稚園の頃の力なくなったよ」
「だからそれを忘れてるんだよ。幼稚園の時、モテてたお前は…」
「何よ?」
「とおるくんだけでいいって、2回目のキスをしたんだ」
少し照れたとおるくんは子供の頃のとおるくんのままだった。そっか。完全に忘れていた。
「ずっと、待ってたんだけどな。誰からの誘いも断り続けて。志保もお前と仲がいいって言うからお前の話を聞いてたんだ。けどそのうち、その…」
「いいよ。忘れてあげる」
モテ過ぎるってのも大変なんだね。だけどもうお互いモテる必要はないみたい。
最初のコメントを投稿しよう!