モテ感染

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目の前をゆっくりと自信たっぷりに歩く女子の姿が見えた。その後を多くの男子が追いかける。 あれは志保ちゃんだ。中学の時に同じクラスで仲もよかった。同じグループだったけど、グループはクラスでも真ん中ぐらいの普通のグループ。高校になってからはクラスも変わり、あんまり話すことがなくなったけど、よく見かけてはいた。 なんだろう。昨日までの志保ちゃんと何だか雰囲気というか空気が違う。見ているとボーッとしてきて、吸い込まれそう。中村先輩を見ている時と同じ感情が沸き上がってくる。あれ?この感じ、ずーっと前にも感じたことある。 それは幼稚園の頃にいつも一緒だった男の子。家が近くて、親同士が知り合いってことで、仲良くしていた男の子。とおるくん。杉田徹(すぎたとおる)。 とおるくんは、とにかく優しくて、おとなしい男の子だった。みんなが泥だらけになって外で遊ぶ中、部屋の中で絵本を読んだり、積み木遊びをしたり、女の子とままごとしたり。他の男の子が叩いてちょっかいを出してくるのに、とおるくんはかわいいってストレートに言ってくれたんだ。 だからだと思っていた。吸い込まれるような気持ち。恋だと知るのはもっと後だけど、あれが初恋だと思う。
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