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「何となく、ですかね」 「何となくじゃつまらんだろ、ちゃんと彼女の為人から推測しなきゃ。お前は人を見る目がないな、人事失格だ」 結論のない会話を続けた後、暫くして掛布は、再び女性店員を呼び付けた。 先ほどと同様に店員は愛想を振り撒きながら二人に近寄ると、注文とともに話しかけた。 「ねぇ君、名前は何て言うの?」 掛布が鼻下を伸ばして問うと、「かな子です」と店員は応えた。たしかに胸元には「かなこ」と手書きで記された名札があった。 「今、血液型占い見てたんだけど、君の血液型を当ててみようかという話をしていたんだ」 酔っ払いの絡みに窮することなく女性店員は笑顔で対応し、話題に乗った。 「そうなんですか、私、何型だと思いますか」 店員は屈託のない笑みを浮かべて言った。 すると徐に「当ててやろう、A型や」とジョーが言うと、店員は驚き様に、 「すごい、正解です。なんでわかったんですか」 と、もともと円らな目を、さらに丸くして驚いた。 「ほんで君、年はまだ十八かそんなもんやろ」 「そうです、十八です」 見事、血液型当てクイズに正解したジョーを、掛布は大袈裟に拍手して称えた。 「凄いな、城山さん。なんでもお見通しじゃないですか、なぜ分かったんです?」 顔を赤らめ、話半分も聞く素振りを見せなかった掛布だが、ジョーがあまりに落ち着き払った様子で血液型と年齢を当てた為、掛布は回答の真意を聞きたくなったのだ。 「まず、年齢を当てるのは簡単だ。若作りしていても、肌艶で大体分かるからな」 ビール党のジョーは、この日五杯目のジョッキに口を付け、粛々と語り始めた。 「大声で言いたくないが、水商売の店で姉ちゃんの年齢をよく当ててるからな。だいたいこの子くらいの年齢はすぐ分かる。水商売は大概、二つ三つ年齢を誤魔化してるからな」 かな子は一瞬、顔を顰めたが、掛布は赤牛の如く首を縦に振り相槌を打った。 「うむ、酷い所だと三十代後半を二十五歳なんて偽ってる店もありますからね」 「ああいうのは警察で取り締まればええんや、ほんまに」 「それで、年齢はともかく、なんでA型って分かったんですか」 かな子の質問に、ジョーは一瞬の溜息の後にこう応えた。 「人当りや」 「人当り?」 「ああ、人当り」 ジョーはジョッキを飲み乾すと、トンと乾いた音を立てながらジョッキを置いた。
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