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「これは答えが明快じゃ、必ずO型を採る。優秀でないA型は、つまり真面目な馬鹿だ。ゼートクの理論にもある通り、勤勉な馬鹿は組織の中で一番使えない。勤勉な馬鹿はプレイヤーとしても結果が出せないし、マネージャーとしても部下を潰すことになる。誤った知識をさも正論のように部下に植え付け続け、気付いたときには時既に遅し、組織ごと崩壊させる懸念がある」 「ほう、名推理ですな」 年甲斐もなく血液型で人間性を判断するジョーの戯言を傾聴するはずもなく、掛布は片肘をついて調子を合わせた。 「となると、総じてO型は有利ですな。逆にB型は不利」 短絡的な掛布の発言に対し、B型のジョーはムッとして応えた。 「そう物事を端的に捉えてはならんのだ。B型で優秀な奴は、業界の第一人者となることができる。会社を辞めて自力で事業を興すことも可能だろう。社員個々の能力や性質を見極めることが人事の仕事だ。それぞれ得手、不得手があって、それらを見極めながら、適材適所に配置してやるのが我々の役目。人を見る目がない奴は人事には向かない」 二人が血液型論に華を咲かせていると、年若い女性店員が追加のビールを運び、二人のテーブルにやってきた。 「生二丁です」 「おう、ありがとうね」 掛布は満面の笑みで店員を見つめると、嬉々としてジョッキを受け取った。 女性店員は今時珍しい化粧っ気のない素朴な笑顔を振りまくと、愛想たっぷりに去って行った。 「いやあ、可愛い店員ですな」 「鼻の下を伸ばすな、気持ちが悪い」 掛布はジョーの下らない経営談義など耳を貸さず、女性店員の尻ばかりを追いかけていた。 「お前は女に弱い」 そんな掛布とは対照的に、ジョーは女性店員になど脇目も振らず、難しい顔をしながら黙々とジョッキを傾け続けるのであった。 「しかし、あの子、よくみて見い。肌の色艶からして案外、若いぞ」 ジョーは店員に一瞥をくれると、何やら品定めでもするような、賎しい目つき言った。 「彼女、いくつだと思う?」 「うーん、二十代前半といったところですかね、いや後半かな」 「甘い、おそらく十代だ」 「まさか…」 掛布は、再び片肘を付く体勢になると、御新香を箸でつまみ上げ、口に放り込んだ。 「じゃあ部長、懸けましょう。あの女性店員は何型だと思いますか」 ジョーはジョッキを口に付けながら悩んだ。 「じゃあ、お前はどう思うんだ?」 「O型かな」 「根拠はなんや」
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