42人が本棚に入れています
本棚に追加
「これは答えが明快じゃ、必ずO型を採る。優秀でないA型は、つまり真面目な馬鹿だ。ゼートクの理論にもある通り、勤勉な馬鹿は組織の中で一番使えない。勤勉な馬鹿はプレイヤーとしても結果が出せないし、マネージャーとしても部下を潰すことになる。誤った知識をさも正論のように部下に植え付け続け、気付いたときには時既に遅し、組織ごと崩壊させる懸念がある」
「ほう、名推理ですな」
年甲斐もなく血液型で人間性を判断するジョーの戯言を傾聴するはずもなく、掛布は片肘をついて調子を合わせた。
「となると、総じてO型は有利ですな。逆にB型は不利」
短絡的な掛布の発言に対し、B型のジョーはムッとして応えた。
「そう物事を端的に捉えてはならんのだ。B型で優秀な奴は、業界の第一人者となることができる。会社を辞めて自力で事業を興すことも可能だろう。社員個々の能力や性質を見極めることが人事の仕事だ。それぞれ得手、不得手があって、それらを見極めながら、適材適所に配置してやるのが我々の役目。人を見る目がない奴は人事には向かない」
二人が血液型論に華を咲かせていると、年若い女性店員が追加のビールを運び、二人のテーブルにやってきた。
「生二丁です」
「おう、ありがとうね」
掛布は満面の笑みで店員を見つめると、嬉々としてジョッキを受け取った。
女性店員は今時珍しい化粧っ気のない素朴な笑顔を振りまくと、愛想たっぷりに去って行った。
「いやあ、可愛い店員ですな」
「鼻の下を伸ばすな、気持ちが悪い」
掛布はジョーの下らない経営談義など耳を貸さず、女性店員の尻ばかりを追いかけていた。
「お前は女に弱い」
そんな掛布とは対照的に、ジョーは女性店員になど脇目も振らず、難しい顔をしながら黙々とジョッキを傾け続けるのであった。
「しかし、あの子、よくみて見い。肌の色艶からして案外、若いぞ」
ジョーは店員に一瞥をくれると、何やら品定めでもするような、賎しい目つき言った。
「彼女、いくつだと思う?」
「うーん、二十代前半といったところですかね、いや後半かな」
「甘い、おそらく十代だ」
「まさか…」
掛布は、再び片肘を付く体勢になると、御新香を箸でつまみ上げ、口に放り込んだ。
「じゃあ部長、懸けましょう。あの女性店員は何型だと思いますか」
ジョーはジョッキを口に付けながら悩んだ。
「じゃあ、お前はどう思うんだ?」
「O型かな」
「根拠はなんや」
最初のコメントを投稿しよう!