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1話 夢色ラビリンス
ある気持ちのいい昼下がりのことだった。
私、音色あせ乃(ねいろあせの)29歳。
彼氏あり、これでも特に大きな出来事もなく、無難に人生を過ごしている社会人。
有給消化のため3日ほど休みをとっていた。
休みだからといって、特にやることもないため、ぼんやりと部屋の中から窓の外を見つめていた。
6月の初め。
風がそよそよと入り、カーテンを揺らす。
そよ風に包まれながら、私はゆっくり瞳を閉じた。
ーーーーーー
気がつくと、ぼんやりと辺りが霧に包まれていて、視界がぼやけている。
その中に浮かぶ、二つの人影。
よく目を凝らすと……、そこにいたのは小学生時代の私自身。
彼女は、ずっとある方向を向いていた。
二つ目の人影の方向を。
彼女の視線に気付いたのか、二つ目の人影である少年が振り向いた。
その瞬間、場面が切り替わる。
ステージは、幼少期によく遊んだ公園。
辺りを見回すと、小学生の私以外、他には誰もいない。
音がない。
静かな空間だけが広がっていた。
すると、後ろから小学生の私……彼女を呼ぶ声がした。
「誰もいない……どこから?」
彼女もキョロキョロと周囲を見渡していた。
声の聞こえた方を必死に探しているようだ。
「あせ乃ちゃーん!!」
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