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再び声がすると、霧の中から先程の少年が現れた。
駆け寄ってくる少年を、私は……勿論、彼女も知っている。
当たり前だ。
少年は……、彼は……
驚きと動揺で、彼女は固まったまま動けないでいる。
代わりに喋ろうにも、何かに縛られているように声が出ない。
「っ、あ……」
小さい私は言葉を詰まらせた。
少なくとも出会えた嬉しさが爆発しそうなのは、赤面具合から容易に察することができる。
すると、少年がニッコリと微笑んだ。
ドクン!!
胸の奥で大きく心臓が弾けた。
胸の奥で燻っている何かが、必死にもがいているのを感じ、小学生の私は何かを決意した。
“そうだ!!今言わなきゃ!!絶対後悔する!!”
彼女の心の声が、頭の中に流れ込んできた。
拳をぎゅっと握りしめる。
バクバクと高鳴る鼓動を押さえつけるかのように、深く1度呼吸をした。
そして、勇気を振り絞って、口を開く小さい私。
「……あっ、あのっ!!私、あなたのことが好きなんです!!ずっと、前から……私の初恋の人なんです!!」
その言葉を聞いた少年は、何の反応も示さない。
何事もなかったかのように笑いかけると、少年は手を大きく振って続けた。
「また明日、学校でなーっ!!」
小さい私の声は、少年には届いていないようだ。
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