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そして夜になると、ミミは熱を出して寝込んでしまった。
井戸から汲んできた水に、白い布を浸す。そしてタムは一生懸命ねじって絞ろうとするが、冷たい水滴がぽたぽたと少しだけしたたるばかりだ。
「そんなんじゃ駄目だ、貸せ」
見かねたブルーが布を取りあげ、両手できつく絞った。
「ほらよ」
「……」
ばっ、とタムは布を奪い返し、口をとがらせる。
「おねえちゃんは、からだがよわいの」
「わかっている。俺が悪いと言っているだろう。だからそんなに睨むな」
「ぶるーは、おうちにかえらなくていいの?」
「いいんだ、俺のことなんか誰も心配しちゃいない。まあ明日になったら顔を出すさ」
「……ほんとうに、かえらなくていいの?」
「……お前、帰ってほしいんならそう言え」
「ぼく、わかんない」
「あ?」
「おねえちゃんは、ぶるーのことがすき。ぶるーは、おねえちゃんのことがすき?」
「……」ブルーは目をぱちくりさせたが、それはたった一瞬のことだった。
「ああ、好きだ。とても大切に思っている」
「そう……。じゃあ、やくそくして、ぶるー」
「約束?」
「うん」タムは思い詰めたような瞳をして頷く。「ぼくといっしょに、おねえちゃんをまもるって」
「護るだと? いったい何から護る」
「……わるもの」
「お前、何を言っているんだ」
「ぶるー、やくそくして」タムは泣きそうな顔で懸命に訴える。「ぼく、ほんとうはとてもこわいの。もうすぐ、このむらにわるものがやってくるの。おねえちゃんが、わるものにつれていかれちゃうかもしれないの」
「……」
ブルーは理解に苦しむといった表情でしばらく腕組みをして首をかしげていたが、やがてニヤリと笑うとタムの頭を乱暴に撫でた。
「お前に頼まれなくたって俺はミミを護るさ。それに約束は苦手だが、そういうことなら話は別だ、喜んで約束してやる。だから安心しろ、な」
「うん。じゃあ、はい」
布がふたたびブルーの手に渡る。タムはとたとたと、部屋の中心にある丸テーブルのところへ行き、古い木の椅子に腰掛けて足をぶらぶらさせた。
ブルーは窓辺のベッドに近づき、浅く腰かけると、横たわって眠るミミの顔を覗き込んだ。頬は上気し、うすく開いた口で苦しげな息をくりかえしている。
そっと薄茶の前髪をかきあげ、額に冷たい布をのせると、長い睫毛が僅かに動いた。
「……ブルー、いてくれたのね……」
「すまない。無理をさせたな」
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