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「お前が…お父さんを…?」
目の前で笑顔さえ浮かべているその男を、夏樹は驚愕の表情で見詰めた。
お父さん。
お母さん。
ふゆちゃん…。
「ゆる…せない…。お前だけは、絶対!許せないっ!!」
感情が昂って、夏樹は大声を上げると目の前の男、神岡を睨みつけた。
掴みかかりたい衝動に駆られるが、勢いよく前へと出ようとするその夏樹の両腕を男達が力一杯押さえつけている。
目の前に仇がいるというのに、一矢報いることさえ出来ず。
何も出来ない己の無力さに、悔しくて、哀しくて…。その大きな瞳からは、涙がぼろぼろと零れ落ちていた。
自分を憎むように向けられる視線。
かつての友人を思い起こさせる、強い光を放つ、鋭い目。
だが、その大きな瞳は涙でキラキラと光って美しい程だった。
神岡は、眩しいものを見るように夏樹を見詰めると、目を細めた。
だが、気持ちを切り替えるように一度だけ目を閉じると。
次の瞬間には、その目の前で怒りを露わにしている少年に、憐れむような瞳を向けて言った。
「残念だが…。ここまで話してしまった以上は、君も生かしてはおけないな。データの在処を吐いて貰った後で、君も家族の後を追わせてあげよう」
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