冬樹と夏樹

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そんな背後から、また誰かがパタパタと駆けてきた。 その足音の主は何と、先程の冬樹と顔、髪型、体格までもが、殆ど見分けがつかない程そっくりな子供だった。 おまけに着ている服までも一緒なのだ。 「…なっちゃん?」 今度は確認を取るように、その探していた夏樹本人であるらしい子供の顔を覗き込む。 すると、 「おかあさん」 やはり、先程の冬樹とそっくりな笑顔を見せて子供は答えた。 そんな子供の様子に思わずホッと胸をなで下ろした瞬間、その子供は面白そうにくすくす笑い出した。 そして、言葉を続ける。 「おかあさん、なっちゃんは、あっちだよ」 「?」 子供の指さす方向に目線を移す。 玄関の扉が半分開きっぱなしになっており、真夏の日差しが眩しい位に注ぎ込んでいる。 その眩しさに目を細め、その光の向こう側をよく目を凝らしてみると、その扉の向こう側では…。 「ふゆちゃーん、はやくはやくー」 両手をいっぱい広げて手を振り、冬樹を呼んでいる子供の姿が…。 やはり先程の子供が本物の夏樹だったのだ。 母親は絶句して、ただ茫然(ぼうぜん)と…追いかけることも忘れて立ち尽くしてしまう。 そんな彼女を尻目に、冬樹も素早く靴を履き終えると、 「いってきまぁーす」 元気いっぱいに外へ駆け出して行ってしまった。 キャッキャッとはしゃぐ二人の声が次第に遠ざかり、蝉の大合唱の中に吸い込まれていった。
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