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よくやったんだ。こーいうこと。
冬樹と夏樹は二卵性の双子。
性別さえ違うものの、まるで一卵性双生児のようにかなり似すぎていた為、両親でさえもうっかりすると間違えてしまうことが少なくなかった。
それが面白くて、よく二人で入れ替わって騙したり、悪戯したりしたのだ。
玄関にひとり残された母親は、ひとつ小さな溜息をつくと。
その後、仕方がないなという感じで優しく微笑みを浮かべると、リビングへと消えていった。
そんな光景をただ横で見ていた自分は、すっかり夢の中だと自覚しながらも、過去の懐かしい場面に浸っていた。
昔の夢を見ているんだ。
まだ若い母親と、双子の兄…冬樹。
そして自分…夏樹。
父親は普通の会社員で、彼もまた母親同様に年若く優しい人だった。
土曜・日曜は勿論のこと、平日でも忙しい時以外は早めに帰宅し、いつでも家族を大切に見守っていた。
平凡ではあるけれど、温かく幸せな家庭だった。
この頃は楽しかった。
この世に生まれた時から…何時、どんな時でも一緒に過ごしてきた冬樹。
大好きな…大切な自分の分身。
大好きな優しい両親。
毎日が明るく幸せな日々。
ふゆちゃん…。
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