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「一人でバーに来る女性に偏見はないですか?私、なかなか一人で入れなくて」
これを聞いて、普段この女と対峙している迷子に少し同情した。
一人でバーに行った迷子を遠回しに落とし、同時にさも自分が貞淑であるかのようにアピールしているのが巧妙だ。
呆れていると、視界の隅で東条の笑顔がわずかな間だけ冷笑に変わった。
彼はきっと既に堀内嬢を見限っている。
それは僕にとって収穫だった。
最初は東条がどうなろうと僕の知ったことではないと思っていた。
けれど迷子を泣かせたくない気持ちも次第に強くなってしまった。
犯人を特定するための罠は既に仕込み、リークを待つばかりになっていたが、公平であるはずの僕は、それに東条が掛からないことを立場に逆らい願ってしまう。
同時に、やっぱり苦労知らずのお坊っちゃまは頼りないなとイチャモンをつける僕もいて、何となくすっきりしない。
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