自覚ー1

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収まりの悪さはともかく、とりあえず迷子の仇をうってやらねば。 けれど僕が口を開くより先に、隣でおとなしくしていた迷子が反撃した。 「東条主任がいるじゃないですか」 「彼、仕事でいつも忙しいから、一人で挑戦してみようかなって」 堀内嬢は質問者の迷子ではなく、僕を見つめて答えた。 誘うきっかけを僕に提供してくれたらしい。 すると、苦笑しながらビールを飲んでいた東条が親しげな笑みを浮かべ、迷子に話しかけた。 「僕たちの仕事はオンオフの区切りがないから仕方ないよね?江藤さん」 言葉の端々にちりばめられた“僕たち親密”アピールに僕の眉が反応した。 これはまさかの瓢箪から駒か? 東条の気を引けると持ちかけて迷子を釣ったが、成就の可能性は如何なものかと正直思っていた。 しかし東条は迷子をかなり気に入っているらしい。 そうするとまた胸の底をかき回されたような気分になった。 例えるなら、これは市場で子牛を売りに出した牧場主の気分だろうか。 迷子に高値はつかないと分かっているのに、僕はこのカップリングに納得したくないのだ。
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