自覚ー1

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東条は真贋を見抜けないのだろうか。 あんな女に騙される東条に、迷子はもったいないのではないか。 腕を伸ばして彼女の手を撫でたのはもちろん演技のためだが、片隅に自負心に似たものがあったのも否めない。 「彼女の場合は酒好きでも男好きでもなく、間違って迷いこんで来た感じだったので放置できなかったんですけどね」 あの夜の彼女を思い出すと、今の僕の内には温もりのある感情がふくらみ始める。 一方で、そんなものねじ伏せてコントロールしろよとプライドが抵抗する。 ……などと葛藤しつつ僕が嫌味砲をぶっ放している間、当の迷子がどうしていたか。 予想通り、彼女は僕の過剰演技に拒絶反応モロ出しで、石像のように硬直していた。
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