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その後も食事をしながら互いへの問答が続いた。
「普段はどんなデートしてるの?」
「仕事のあとにお食事、とか」
迷子の返答は無難だったが、堀内嬢は意地悪く首を傾げた。
僕たち二人の矛盾を突くか、他人の恋人を攻略ポイント探ししかしていない印象だ。
「いつも退社は九時ぐらいって、この間言ってましたよね?それからお食事?」
すると東条までが不思議そうな顔をした。
「いつも真っ直ぐ帰ってるのかと思ってたよ」
しかし堀内嬢と違い、悪意はない。
東条は従順な迷子はいつでも自分の目の届く範囲にいると思っていたらしい。
彼の率直な反応に所有欲を感じ、僕の胸はまた濁り始める。
それを僕は自制心で抑えこんだ。
彼女との取引上、彼の好意は歓迎すべきことだ、と。
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