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「えーと、お互い忙しいので……」
「僕の部屋に来ることがほとんどですね。彼女の通勤経路の途中駅なので。僕も仕事で遅くなるから、その方が都合がいいんですよ。合鍵も渡していますし」
助けるついでに探りを入れるため、口ごもった迷子の台詞を僕が引き継いだ。
「へえ、合鍵を?」
「はい。時間を合わせなくていいですし」
「ああ、そうか。僕はちょっと抵抗あるんですよね」
僕が人事関係者とはまだ明かしていないにも関わらず、東条は判定にかなりプラスになる反応を見せた。
「江藤さんからお聞きになっているかもしれませんが、僕たちは仕事の性質上、秘密保守の契約を結んでいるんです。だから恋人とはいえ誰かに合鍵を渡すと何かと問題が」
「なるほどね」
きっと情報を無防備に放置して犯罪を誘発したのではなく、堀内嬢が意図して盗んだのだろう。
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