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今日の香子は服装も髪も普段の仕事モードより女度が高く、僕が到着する前にワインをボトルで注文してあった。
僕はそれを断った。
「仕事に戻るの?今から?」
香子は軽い口調を装っていたが、一瞬だけ不満気な表情を浮かべたのに僕は気づいていた。
探るような香子の視線を何食わぬ顔で受け止め、短く答える。
「いや」
隠すつもりはないが、話す気もない。
香子はそれを読み取ったらしく、以降は一言も触れてこなかったが、それは察するところがあったからだろう。
勘のいい香子が相手とはいえ、他人に変化を見抜かれるほど僕はいかれてしまったのだろうか?
それは僕をより頑固にした。
あんな厄介で頼りない、しかも他の男を崇拝している女に予定を狂わされてなるものか、と。
けれど香子に協議のアドバイスをする間も、堀内嬢とどう戦っているのか、僕はずっと時間が気になってばかりいた。
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