自覚ー2

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東条は自分の仕事のうち迷子に関連するものについてのエピソードをいくつか僕に語ってくれた。 どれも微笑ましいもので、“恋人”である僕の気分を害するような言葉はなかった。 「皆川さんはどんなお仕事を?」 そのあと、今度は僕の仕事について質問してきた。 尋ねるばかりでなく相手が喜びそうな話題を提供することを忘れないところも、胸襟を開かせる人懐こさと気配りも、インタビュアーとして優秀だと思う。 「コンサルティング業務が主です」 「素敵なお仕事ですね!」 ところが僕が答えた途端、東条が答えるより早く、横手から声が上がった。 見るとそれまで東条が迷子との仕事話をしている間は無関心にそっぽを向いていた堀内嬢が目を爛々と輝かせている。 コンサルティングの仕事は相手企業の機密に触れることが多い。 スパイである堀内嬢にとって非常に美味しい職業だろう。
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