心の在り処

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 しかし、沙代は左目が治った後も保健室に顔を出すようになった。別にどこも悪くない。ただただ、友達の家に遊びに来たと言わんばかりだ。 「先生、今日はお茶を出してくれないんですか?」  冬休みを目前とした今日はまた一段と寒い。冬めいてきた頃から、保健室を訪れる生徒には温かいお茶を出すようにしていた。 「お前最近毎日のように来るだろう。お茶代が勿体ない」 「そんなー! あれが楽しみで毎日来ているのに!」  お徳用の茶葉で淹れた緑茶を毎日の楽しみにするなんて、随分と安い女子高生なことだ。しかし、頬を膨らますその仕草に、俺を見据える真っ直ぐな瞳に、そんな他愛ないやり取りさえ居心地良く思えた。 「それより、部活はいいのか? もうすぐ大会なんだろ?」 「あー! もうこんな時間!? ごめん、もう行くね! また明日!」  そう言うと、沙代は慌てて保健室から出て行った。あまりにも急いだからか、保健室に鞄は置きっぱなしで、気付いてすぐに廊下まで追いかけたが、既に沙代の姿はそこには無かった。運動部と言うだけあって足の速さには感心したが、さてこの鞄はどうしたものか……。  届けるか少し悩みはしたが、とりあえず預かっておけばそのうち取りに来るだろうという結論に至り、俺だけになった保健室に戻る。
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