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やっと沙織の瞳に光が戻ってきた。
俺は安堵のため息を吐いた。
もう1度言っておく。
沙織は本当に大人しくて可愛らしい女の子なんだ。
痴漢にあっても声すら出せないくらい。だから、護身術にキックボクシングを習い始めたら瞬く間に実力が開花し、今では職業キックボクシングインストラクター。
だけど、いつもこんな風に狂暴なわけではない。彼女にも暴力的になる理由がある。
男に嫌悪感を抱いているのだ。
そりゃ、電車に乗る度に痴漢に遭うような不運の持ち主なのだから気持ちはわかる。
わかる、が!
俺は曲がりなりにも彼氏なのに……俺達はまだ手も繋いでいない。
ちなみに今日は交際3ヶ月の記念日だ。
晴れてストーカーから彼氏に昇格して3ヶ月。未だにどうして交際を承諾してくれたのかわからない。
今も俺が手を握ろうとした途端、豹変してしまったし、本当に俺のことを好きなのだろうか。
「あの……さ」
俺は、普段通りの沙織に戻ったことを確認しながら再びソファへ腰を下ろした。
「俺のこと……好き?」
沙織は間髪入れずに「うん」と答えた。
だよな? ちゃんと好きだから付き合ってくれてるんだよな……
「俺のこと怖い?」
今度は首を左右にふるふると振った。
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