10人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「嘉人(よしと)くんが怖いわけじゃないの……でも触れられるとこう……気持ちの奥の方がザワザワしてきちゃって……成敗しなきゃ! って気持ちになっちゃうの」
「ハハ……」
俯き、肩を震わせながら「ごめんね」と呟く沙織を許さない理由があるだろうか。
「つーらーいー!!」
会社帰り、大学時代からの友人の棚橋と居酒屋にて。
「そりゃツライな。俺達25歳の健全な男子だもんな」
棚橋は俺の肩を叩くと哀れみの目をしてそう言った。
「棚橋……俺はどうしたらいいんだ」
「知るか。時間かけて信頼得るしかないんじゃねーの?」
棚橋は他人事のようにイカの一夜干しを美味そうに食べている。
「時間……って何ヶ月? 何年? 無理! 無理無理無理!」
「だったら別れたら?」
「はぁ!? そんなのもっと無理!」
「あーっそ。面食いのお前のどストライクだもんなー」
「そうなんだよー……って顔だけじゃないぞ? 性格も大好きなんだ。ただ触れると豹変して狂暴になるってこと以外は……」
そう、それさえ無ければ何も言うことはない。
「そこ、1番厄介じゃね?」
「聖人君子になるしか……」
棚橋は苦笑するとスマホを俺に渡してきた。
「ん?」
画面にはプラネタリウムのような星空が映っていた。
「そこ、都内から車で3時間くらい走った場所にある丘から見た空なんだけどさ」
最初のコメントを投稿しよう!