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「おい、走れ!」
身の危険を感じ、男に言われるがまま足を動かした。目的地は分からなかったが、ここよりも安全な場所であればどこでもよかった。
車通りはそれほどなかったが、逃げる人々は車道にまで溢れ、時折クラクションの音も聞こえた。
赤信号の横断歩道を渡り、道路交通法に違反している自分に罪悪感を覚える。緊急事態だからお巡りさんも許してくれるだろうと自分に言い聞かすが、もし警察に見つかったら問答無用で撃たれるのではないかという恐怖も感じた。
大通りから脇道に入り、さらに角を曲がる。こんなに走ったのはいつぶりだろうか。思っていたよりも早く息が上がっていることに自分でも驚いた。私の体力はいつの間にこんなに落ちていたのだろうか。
男はしばらく走ったところで立ち止まった。市役所からだいぶ離れた、国道沿いのコンビニの前だ。呼吸を整えながら店内を見た。ここまでは市街地の様子が耳に入っていないのか、客や店員は普段と変わらない様子だった。国道を走る車の流れも普段通りに見える。
呼吸が整ってくるにつれて、急にさっきまでのことが夢だったのではないかと思えてくる。とても現実とは思えなかった。
「兄ちゃん、金持ってるか?」
見ると、男はコンビニの外に置かれたベンチに腰掛け、店内を指差している。「のど乾いちまってよ」
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