3. コンビニ

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 コンビニの時計が22時15分を指していた。缶コーヒーとコーラをレジに置く。  さっき会ったばかりの見知らぬホームレスにおごってやる筋合いはなかったが、あの男にはまだ聞きたいことがたくさんあった。  不愛想なレジの店員が面倒くさそうに商品をスキャンしていく。 「君は何が不満なんだ?」と心の中でつぶやく。「君は明日券を持っているのか?」  店内には陽気なBGMが流れていた。のんびりとレジを打つ店員を見て、必死なのは自分だけなのではないかと思えてくる。幸せな人と不幸な人。勝ち組と負け組。明日死ぬ人と死なない人。レジのこちら側と向こう側で大きな隔たりがあるように感じた。  会計を済ませ外へ出ると、コンビニの前のベンチで男がくつろいでいた。 「よく我が家みたいにくつろげますね」 「外はみんな我が家みたいなもんだからな」  私は男にコーラを差し出すと、男は軽く礼を言ってフタを開けた。 「今日はコーラが飲める日なんじゃないかと思っていたんだ」そう言うと、男はコーラを口に含んだ。 「だれのおかげでコーラが飲めてると思ってるんですか」私は缶コーヒーを開けようとするが、なかなか開けることができない。そのとき初めて、自分の手が震えていることに気がついた。 「いいじゃねえか、どうせ明日が来ないかもしれないんだろ?」 「縁起でもないことを言わないでくださいよ」  本当なら今すぐにでも明日券を手に入れたかったが、市役所に戻る気にはなれなかった。 「明日券を手に入れる方法ならないことはないけどな」  男は私の心の中を見透かしたように言った。 「本当ですか?」 「さっきも言っただろ。明日券を余分にもらって転売しているやつらがいる」 「そいつらから買えと?」 「可能性があるとしたらそのぐらいじゃねえか?転売屋だって今日中にさばかなきゃならねえから必死だ」 「でも、どうやって」  転売屋なるものがこの街のどこかにあるのだろうか。国道沿いを見渡してみてもチェーン店が立ちならんでいるだけで、それらしき店はひとつもなかった。
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