3. コンビニ

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「直接売りさばくのはリスクが高いからな。まずは政治家や金持ちの元に渡って、余った分はSNSで金のありそうなやつでも見つけて接触してるんじゃねえか?」 「じゃあ万が一、見つけられたとしても」 「足元見られて法外な値段をふっかけられるだろうな」 「そんな・・・」残酷だ・・・残酷すぎる。  私の落胆をよそに、男は顔の上で缶を逆さにしてコーラを飲みほした。 「コーラと同じだよ」 「コーラ?」 「金を払えば美味いジュースが飲めるし、明日を買うこともできる」 「あなたお金払ってないじゃないですか」 「固いこと言うなよ」と男は無邪気に答える。 「あなたは怖くないんですか?」気になっていたことを男に質問した。 「怖い?」 「明日が来なくなるかもしれないんですよ」なぜ恐ろしくないのか、はなはだ疑問だった。  男は言葉を探すように、空中を見上げている。 「明日券を気にしなくなって分かったことはな、明日券があろうがなかろうが、変わらないのさ。明日が来るやつには来るし、来ないやつには来ない」 「でも今は明日券を受け取れない人が大勢出ているんですよ」 「それでも明日を生きられるやつのところには明日券が配られているし、転売屋から買えたやつも運が良かったと言える。そもそも明日券が無いと明日が来ないという保証もないだろ。特に今回みたいな場合には特別な措置なんかもあり得る」  男の話はあまりにも不確定に思えた。突然のことで誰もが正確な情報を得られないことは理解できたが、明日どうなるかわからない状態で残りの時間をどうやって過ごせというのか。1秒ごとに心臓が縮まっていくような恐怖を感じる。  そのとき、どこからか鈍い音が聞こえた。  かすかだが耳に残るその音を、初めは男のゲップかとも思ったが、連続して途切れ途切れに聞こえるその音は私のカバンの中から聞こえていた。  カバンを開け、マナーモードのまま光っている携帯電話を取り出した。「ミホ」と画面に表示されている。  向こうから電話がかかってくるのは久しぶりに思えた。
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