2. 市役所

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 テレビを見ながら片手で携帯を操作した。右手にはリモコン。左手には携帯。両手が忙しくて猫の手も借りたいぐらいだ。  困った時にはネットで検索するクセが付いていたが、今回のケースでは検索しても有益な情報など得られるとは思えなかった。  ミホは大丈夫だろうか。心配になって電話をかけるが、つながらない。この事態に回線が混雑しているのかもしれない。  仕方なくミホにメールを送り、念のためネットで検索をしてみたが、いくら調べても情報は錯綜するばかりでやはり有益な情報は得られなかった。 「ガラケーよりスマホの方が優秀なんですよ」と職場で後輩が自慢げに語っていたことを思い出す。 「大事なときにちっとも使えないじゃないか」私は携帯電話をカバンの中に押し込み、テレビの電源を消す。  とりあえず市役所へ向かうことにした。明日券は行政の管轄のはずだ。市役所に行けば何か分かるかもしれない。  家を出る前に腕時計を確認する。時計の針は21時を指そうとしていた。  アパートを出てひとり、市役所へ向かって歩いた。議事堂前ではあんなに騒動になっていたのに、夜の住宅街は無気味な静けさに包まれていた。  他の人の家には明日券があるということなのか。もしくは明日券が配布されていないことにすら気がついていないのかもしれない。  それでも街の中心部、市役所に近づくにつれて、人はだんだんと増えていた。この時間であれば普段からある程度の人はいるが、それよりも多く感じる。街中がざわめいているような胸騒ぎを感じた。
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