魔法の家

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ガキどもと少年が緊張した面持ちで雪山を掘っていく。それをみんなで見守っている。そうみんな。ぐるりと見渡せば、最初よりだいぶ賑やかだ。トラックで雪を回収しに行った嫁さんとガキどもを見て近所のヒマな人たちが何だなんだと集まった。トラックの持ち主の会長さんはじめ近所の子どもたちやその親たち、実にたくさんの人の協力で雪をかき集めた結果。大人2人くらいが入れる大きさで作れるくらいになった。 『雪が積もった時にだけ使える魔法なんだ。』 『人と人を繋げる魔法の家だから。』 あぁ。なるほどな。確かに魔法だ。かまくら一つ作るのにこんなに多くの人が集まった。なんだかとても暖かい気持ちになって、同時にどうしても考えてしまう。もし、もしあの時。俺が勇気をだして彼に話しかけていたら。彼もこんな風にかまくらをつくり上げることができたんだろうか。 「「「かんせーーーい!!!!」」」 そんなことを考えている間にいつの間にか子どもたちは雪山から顔を出してそう叫んだ。ワッとその場にいる人達からも歓声が上がった。親たちが汁粉を持ってくるわねとバタバタと去って行き、子どもたちは肩をたたいたり「やったな。」なんて大はしゃぎである。その中には少年の姿もあって。 「あ、ありがとう!!ホントは魔法なんて嘘かなってちょっと思ってたけどやっぱり本物だ!!パパの言ったとおりだ。」 なんて涙ぐみながら子供たちの中心で笑った少年に不覚にもうるっとくる。歳のせいで涙腺が弱くなったみたいだ。なんてごまかしてふと気づく。 「ん?パパ?」 「ゆうや。友達ができたんだな。」 疑問を口にすると同時に、不意に後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。     
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